【チャンク】名詞チャンク: 後置修飾(2) 前置詞


今回は、名詞チャンクの後置修飾詞・前置詞について説明します。前置詞は、それだけで一冊の分厚い本がかけるほどの奥が深い文法要素です。ここでは、前置詞に対する新しい見方と、どうすれば前置詞を効率よく勉強できるかについてのヒントをご提供したいと思います。


・「チャンクって何?」と思った方はまずこちらをお読みください。: スピーキング力の決め手は「小さな英語」
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■ 名詞修飾としての前置詞



on、in、for、about、below、from、... 英語学習者にはちょっと敬遠されがちな前置詞ですが、個人的には知れば知るほど味のある、非常に面白い文法要素だと思います。前置詞はすべてたった1、2シラブルの単純な単語ですが、適切に使いこなすことでフレーズが英語らしい、シャキッと身のしまったものとなります。

名詞チャンクに含まれる前置詞は、修飾する対象の名詞の位置情報・時間情報・非物理的関係情報などを表現します。言い換えると、修飾される核名詞が「どこにあるのか(位置)」、「いつのものか(時間)」、「何のためのものか(非物理的関係の一例)」を限定するのが、前置詞です。

日本語には、前置詞に対応する文法要素はなく、助詞や「...の上の」、「...に向かって」などのフレーズで表現します。(日本語での他の修飾詞と同様、これらも必ず名詞の前から修飾します。一方、英語の前置詞は、必ず名詞の後ろに修飾詞の置かれる、後置修飾になります。)


(日)
その屋根の上のバイオリン弾き
(英)
a fiddler on the roof
バイオリン弾き / その屋根の上の

(日)
あの虹の向こうのどこか
(英)
somewhere over the rainbow
どこか / あの虹の向こうの

(日)
不思議の国のアリス
(英)
Alice in Wonderland
Alice / 不思議の国にいる

上記にあげた例からもわかるとおり、前置詞は単独では機能しません。必ず名詞チャンクを目的語として後ろに取り、前置詞句となることで初めて修飾詞としての役割を果たします。

以下は、前置詞句が後置修飾となった名詞チャンクのモデルです。

■ 前置詞はなぜ難しい?



上記のイメージを見ると、前置詞句そのものの構造はそれほど複雑ではありません。それなのに、なぜ前置詞が多くの学習者に苦手とされているのでしょうか?考えられる理由を二つあげてみましょう。

 (1) 一つの前置詞にたくさんの用法があって覚えきれないし、使いたいときに思い出せない。

前置詞を辞書で引いてみると、それぞれに必ず複数の用法があります。(少なくとも、三つ以上)

たとえば、一見単純そうな between という前置詞でも、ジーニアス大辞典によれば五つの用法に区分されます。さらに汎用的に使われる oninatfor などは用法を数えるだけで頭が痛くなります。

学校教育では多くの場合、必須の(と思われる)限られた用法のみが個別に紹介され、それらはひたすら暗記という学習者に大きな負担をかける方法によって習得されることを期待されています。


 (2) 前置詞の定義と日本語の修飾詞の定義が一対一ではない。

辞書には前置詞の用法が日本語で紹介されていますが、実際の用法と日本語の定義が必ずイコールであるとは限りません。

たとえば、「その机の本」という日本語を英語にしてみるとします。前置詞が苦手な学習者は「?の」という助詞を、辞書の定義の通り of と結びつけてしまい、"the book of the desk" としてしまうことがあります。しかし、「その机の本」とは通常「その机の上に本が乗っている」という状況を示すため、この場合は『上部への接触』という位置情報を表現する on を使わなくてはなりません。つまり、"the book on the desk" となります。

on についてもう一つ言えば、「そのテレビの上の写真」と言えば、「そのテレビの上に写真が乗っている」を表す "the photo on the TV" とするのが素直な英訳です。しかし、「そのテレビの上の写真」は、別の状況を示すこともあります。テレビは通常壁際によせて設置されているものですが、そのテレビの背後の壁、そしてテレビよりも上方の辺りに「写真がかかっている」場合もあるでしょう。この場合は、前置詞に on を使うことはできません。on は目的語である名詞チャンクとの『接触』を含むため、テレビと接触していなければ使うことができないのです。ここでは、『接触を含まない上位置』を示す above を使い、"the photo above the TV" とすべきなのです。


「一つの前置詞には日本語訳と必ずしも対応しない複数の用法があり、さらに前置詞そのものも30個近くある」となれば、日本人にとって前置詞が敬遠したい文法要素であることは不思議ではありません。100 以上もある用法をランダムに暗記し、それをスピーキングで使いこなす、なんて考えただけでも嫌です。

しかし、実際は「複数の用法のランダムな暗記」は前置詞の勉強として最も効率の悪いやり方です。前置詞の複数の用法はばらばらに見えても、深いつながりがあり、より多くの用法を記憶し使いこなすためには、その関連性に注目することが一番の近道なのです。

次のセクションでは、この点についてさらに説明します。



■ 前置詞はコアをとらえれば怖くない!



辞書である前置詞を引くと、複数の用法が列挙されており、一見ばらばらの違う用法が定義されているだけのようにも見えることがあります。しかし、実際は前置詞には「一つのあいまいなコア的意味」があり、それらがさまざまな方向へ拡大解釈されて、その他の用法が生まれているのです。このコア的意味はたいてい、その前置詞の「位置情報」を示す最も基本的な用法に相当します。

たとえば、前置詞 on を見てみましょう。on の、コア的意味は『(上方向を主とした)接触』です。

(a) (上方向への)接触 the book on the desk
(机の上の本)

on には、非常に多数の用法がありますが、ほとんどがこの on のコア的意味 (a) からの拡張です。たとえば、以下のような拡張の例があります。

(b) 下・横方向への接触
(接触の方向の拡張)
the paint on the wall
(壁にかかった油絵)
a fly on the ceiling
(天井にとまっているハエ)
(c) 近接
(接触まではしていないが、ごく近い距離を保っている)
a restaurant on the lake
(湖のほとりのレストラン)
(d) 支え
(上方向に接している=下方向から支えている)
the man on all fours
(四つん這いになった男)
※ all fours =「両手足」

前置詞を勉強する上で一番の近道かつ王道は、前置詞のコア的意味を把握した上で、辞書にあるようなこまごまとした用法と、コア的意味との関連づけを行っていくことです。また各用法をチェックする際は、多くの実際の用例を見ることも大切です。

また、前置詞のコア的意味は、「言葉」ではなく「イメージ」として捉える事も重要です。「言葉」は「イメージ」にくらべて記憶しにくく、意味を定義しすぎるので柔軟性を失いがちです。上記のように、自分なりにイメージ図を書いてみるのもいいでしょう。

個々の前置詞については、Ricko 発行のメルマガでご紹介していますので、興味があればご参照ください。また、前置詞のコアについては、ポール・マクベイ氏/大西 泰斗氏が共著している本でも紹介されています。



次回は、名詞を修飾する不定詞について解説します。




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このページは、Rickoが2008年6月20日 01:00に書いたブログ記事です。

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