はじめに
■ ごあいさつ
■ 英語力=四つの「スキル」
■ 英語力=四つの「能力」
■ このサイトにおける英語学習情報とサイトマップ
■ 英語の上達と『動機』の関係
■ ごあいさつ
こんにちは、はじめまして。Eigoriki.net 管理者の Ricko です。私がアメリカ東海岸の小さな町に移り住んで約三年になります。私は渡米してから二年ほどTESOL(Teaching English as Second Language:第二言語としての英語の教授法) を専門に勉強し、昨年五月に教育学修士号を取得しました。三年前にアメリカに来てから、また大学院に入学してから、さまざまな面で英語には悩まされつづけましたが、同時に英語力の向上の実感や、英語ネイティブであるアメリカ人と対等に意見を交換できるという喜びを味わうことが出来ました。
私は日本人全員が英語を使えるようになるべきである、とは思いません。でも、キャリアアップの機会、他の国の人々との交流、専門分野の研究の広がりなど、英語ができることで可能になることが多いのは事実です。なにより、帰国子女でもなんでもない私自身が、英語を通して出会うことのできた人々や、体験できたさまざまなこと、また英語が伸びることへの純粋な喜びを感じられたことを、英語を勉強している、また勉強しようとしているみなさまにも同じように経験してもらえたらいいな、と考えています。
私のご紹介する学習情報は、「三ヶ月あれば○○できるようになる」というたぐいのものではありませんし、旅行にすぐに使えるようなフレーズを覚えたい、というような方には、向いていません。付け焼刃ではない本物の英語運用力を身につけて、英語を媒介に自分の専門分野での仕事や勉強がしたい、と真剣に考えておられる方に、少しでも役立てる情報をお届けしたいと考えています。
さて、一口に「英語力」といっても、その正体は曖昧模糊としてます。ここでは、「スキル」と「能力」という二つの観点から「英語力」を整理してみたいと思います。
■ 英語力=四つの「スキル」
英語力は、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの四つの「スキル」に分類されます。学校教育では、これらのスキルは完全に別個のものとして扱われがちですが、実際には四つのスキルは密接に関連しあっています。
たとえば、リスニングで音を聞き取れるようになるには、スピーキングである程度正しい発音ができることが条件となります。また、聞き取った音のスペルがなんとなくわかることで、リスニングで得た新しい語彙やフレーズの記憶を紙に残したり辞書をひいたりすることができるので、語彙力の向上を図ることができます。また、スピーキングが向上すると、英語で効率よく考えられるようになるので、ライティング力も自動的にあがります。
学校教育では英語の「読み書き」に偏重しているために、多くの日本人がスピーキングやリスニングで遅れをとっているという事実は否めませんが、「読み書き」の練習で培われた文法力、文の構成力、語彙力は、スピーキングでもリスニングでも十分に役立ちます。発音やイントネーションの練習をすることで、培った「読み書き」の力を適用し、話ことがを含む英語力全体を伸ばすことは理論上は十分に可能です。
リスニング・スピーキングの「話し言葉」とリーディング・ライティングの「書き言葉」の違いを見てみましょう。
リスニング・スピーキング | リーディング・ライティング | |
文法・構文 | 単純・あいまい・文が短い 文章が短め 主節-従属節の関係がくずれやすい 代名詞の入れ替わりなどがおこる |
複雑・厳密 |
語彙 | 単純・容易 基本動詞を使った句動詞の多用 |
高度・複雑 同じ語彙を使うことを避ける |
滑らかさ | 言い直し、ためらい、繰り返し、割り込み | スムーズでよどみがない |
上記の表からは、「リスニング・スピーキングは、リーディング・ライティングをそのまま『話し言葉』にしたものではない」ことがおわかりいただけると思います。全体的に、書き言葉に比べて、話し言葉は「簡単で単純」です。事前に原稿などが用意されてない会話や講演の内容のトランスクリプトなどを見ると、「あれ、案外難しいことを言っていないな」と感じるはずです。「話し言葉」で要求される文法・語彙のレベルは、「読み書き」のそれよりも低いため、話し言葉独特のスキル(発音や会話のつなぎ方など)を練習すれば、比較的容易に「読み書き」のスキルを移行することができるのです。
発音、会話のつなぎ方などは、学校教育ではあまり学習するチャンスがありません。このサイトでは、読み書きとは違う点に着目しながら、リスニング・スピーキング力を向上するための情報を掲載していくつもりです。
■ 英語力=四つの「能力」
「文法的に正しい文章が作れる」「流暢に発話できる」ことだけが、英語力ではありません。言語学者の Hymes は、言語を「社会的な活動を行ううえでのツール」と位置づけ、第二外国語の運用力を「コミュニケーション能力(Communicative Competence)」 として、これをさらに文法能力、談話能力、社会言語能力、方略的言語能力の四つの「能力」に分類しました。
(1) | 文法的能力 (Grammar Competence) |
いわゆる「文法」ですが、ここでは発音、スペリング、語彙なども含まれています。「正しい」かそうでないかの明確なルールがある事柄に関する能力です。 |
(2) | 談話能力 (Discourse Competence) |
ばらばらの文やフレーズを組み合わせて、まとまった意味を構成できる能力です。主に、Signal Words と呼ばれる、文をつなぐフレーズや語彙をうまく扱えるかが重要となっています。さらに、相手のいる会話でいかに参加し、意味を交換し合えるか、という点も含まれています。 |
(3) | 社会言語能力 (Sociolinguistic Competence) |
状況に応じて、言語を使い分ける能力のことです。丁寧さや、書き言葉・話し言葉の違い、などさまざまな要素があります。また、依頼や拒絶などのフォームを社会のルールに従って、適切に使いこなせることも含まれています。 |
(4) | 方略的言語能力 (Strategic Competence) |
コミュニケーションを成り立たせるための、ストラテジー(方略)を使う能力です。たとえば、ジェスチャーを使う、聞き取れなかった部分を相手に聞き返す、自分の理解の範囲を確認する、など、言語的能力のギャップを埋めて、コミュニケーションを成立させるためのさまざまな方法を扱える能力です。言語的方略と非言語的方略があります。 |
等しく重要な四つの「能力」の中で、やや軽視されがちなのが (2) の談話能力と (4) の方略的言語能力です。
(2) の談話能力はコミュニケーションの要であり、これをなくして英語を総合的にネイティブに近づけたとはいえません。
また、(4) の方略的言語能力は、コミュニケーションの成立だけではなく、英語力の向上そのものにも非常に重要です。勉強のマテリアルとして使われる英語は、「学習者にとって理解できるレベルである」ということが重要であるという研究があります。つまり、ストラテジーを利用して相手の意味を「理解できる」ことで、コミュニケーションが成立できるだけではなく、自分の英語学習そのものにもいい影響があるのです。さらに、コミュニケーションの成立は、達成感をもたらします。達成感は、さらなる英語学習へのモティベーションとなり、積極的な学習姿勢につながります。
これらの四つの「能力」は偏りなく学習する必要があります。英語圏で誰かに電車の乗り方をたずねるとします。相手に伝えるためには、適切な「発音」で正しい「文法」を使用し、質問するための「語彙」をもっていなくてはなりません。((1) 文法的能力)また、会話を行うためには、文章を論理的まとまりにまとめ、会話に参加することができなくてはなりません。((2) 談話能力)見知らぬ人には、それ相応の丁寧さで対応できなくてはなりませんし((3) 社会言語能力)、もし聞き取れなかったら聞き返す、適切な言葉が思い浮かばなかったらジェスチャーでも絵でもつかって、相手に伝えなくてはなりません((4) 方略的言語能力)。
このように、ちょっとしたシチュエーションでも四つの「能力」が大切な役割を果たしているのがお分かりいただけるでしょうか。全ての英語学習は、偏りなく、これら四つの「能力」をのばすものではなくてはならないのです。
■ このサイトにおける英語学習情報とサイトマップ
このサイトでは、英語の四つの「スキル」と四つの「能力」を伸ばすために、以下のような情報を掲載しています。
発音
英語には子音が 24 種類、母音は 19 種類あります。これらの個々の発音を、日本人にあわせて解説しています。また、学校ではあまり習わない発音の応用、リエゾンやフラッピングなどについても触れています。
個人的には個々の発音よりも重要であると考えている、ストレス(アクセント)についても詳しい解説があります。
カテゴリ内の重要記事:
・なぜ英語の発音を勉強するのか
・なぜストレスが重要なのか
文法・チャンキング
「文法・語法」のカテゴリでは、日本人がつまづきやすい文法について解説しています。最近は、学校教育もコミュニケーション重視になりつつあると聞いています。しかし、それは「文法」を軽視していいという理由にはなりません。「文法」は、英語を苦労して学んだ先人がまとめてくれたルールブックです。人間は、整理された情報のほうが頭に入りやすいのですから、つまらなくてもしっかりと文法は勉強する必要があります。私の周りでも、渡米や渡英して英語が急激に上達したというひとは、基本の文法や語彙をおさえている人ばかりです。
さらに、文法に関連してこのサイトでご紹介する概念が、「チャンク」です。スピーキングにおいては、意味の単位は「文」ではなく、より小さな意味のかたまり「チャンク」で構成されます。スピーキングは、チャンク単位での「小さな英語」を次々と作り出し、その小さな英語をゆるやかな結合でつないでいくことで全体の意味の構成を目指す(=チャンキング)、というプロセスです。チャンク内では文法がしっかりと守られているので、小さな英語を作れるようになるには、文法を実践的に扱えるようになる必要があります。このサイトでは、文法を実践的を使いこなしてスピーキング力を向上させる「チャンク」について解説しています。
カテゴリ内の重要記事:
・スピーキング力の決め手は「小さな英語」
表現・イディオム・単語
表現、イディオムや単語も載せていますが、このサイトではややオマケ的な扱いです。(どちらかというと、私の楽しみのため、というか…)ただしご紹介している表現などについては、私が実際に見聞きしたものばかりですので、「こんな表現本当に使うの?」という心配は無用です。単語の勉強の仕方については、そのうちにご紹介しようと考えています。
また、表現・フレーズについては、「社会言語能力」や「方略的言語能力」に相当するシチュエーションごとの表現集などもときどき追加しています。
リスニング・スピーキング・リーディング・ライティング総合
四つの「スキル」別に、学習方法などをご紹介しています。TOEFL などの資格試験の準備にもお役立てください。(現在、リーディング総合以外は準備中です。)
生活・雑学
アメリカ生活に関する、オマケ的なコラムです。アメリカで使われる重さや長さなどの単位について詳しい解説がありますので、そちらは結構参考になるかと思います。
■ 英語の上達と『動機』の関係
最後に、英語の上達の一番大事な鍵について触れておきたいと思います。それは、英語を勉強する「動機」と「目標」です。この二つは、英語力向上の決め手となる、重要な要素です。
あなたが英語の勉強をしている、またはしようと思っている理由は何ですか?はっきりとした目的がなくては、英語はなかなか上達しません。言語は他の勉強に比べて、とても成果の出にくい勉強です。あなたが毎日 3 時間英語を勉強したとしても、英語力の伸びを実感できるようになるのは早くとも 3 ヵ月後でしょう。一般的に英語で不自由を感じなくなるには、2 年から 4 年はかかります。あきらめずにねばり強く勉強を続けていくためには、「私は何のために英語を勉強しているのだろう?今の勉強で、目標に近づけているだろうか?」と、ときどき自分を振り返ってみることが大切です。
「英語を使って何をしようか、何ができるか」と考えてみてください。通訳などを目指している一部の人を除いて、ほとんどの人にとっては、英語そのものは最終目的ではなく、あくまで他にできることを伸ばすためのツールのはずです。
英語を勉強する目的がはっきりすれば、おのずと「どのレベルを最終目標にすべきか」も見えてきます。人間は「目的地がどこか」がはっきりしないと、なかなかやる気が出ません。「英語ができたらいいな」と思いつつ、漫然と勉強を続けていても、英語のトリビア的知識ばかり身についてしまって不完全燃焼のまま終わってしまうでしょう。