【発音】なぜ英語の発音を勉強するのか |
英語の発音は、英語学習において大事な要素のひとつです。しかし、単語の暗記やリスニングのような今すぐに役立ちそうな勉強に比べると、重要性がいまひとつはっきりせず、後回しにされがちです。なぜ発音の勉強は大事なのでしょうか?今回は、発音を勉強しはじめようか迷っている人のために、FAQ の形で発音の大切さについてご紹介します。
- なぜ発音を勉強する必要があるのでしょうか?
- なぜ私の発音は通じないんでしょうか?
- 発音は誰でも改善できるんですか?
- 大人になったら、発音を矯正するのは無理ですか?
- 日本語なまり(アクセント)をなくすことはできますか?
- 英語には標準語がありますか?一番正しい発音を学びたいです。
- 発音記号は勉強する必要がありますか?
- フォニックスとはなんですか?
- 発音はどこから、どのように勉強を始めればいいんですか?
- 正しい発音を習うにはネイティブの先生の指導が必要ではないんですか?
■ なぜ発音を勉強する必要があるのでしょうか?
発音の知識は、英語のオーラルコミュニケーション力の向上には必要不可欠のものです。英語の音には日本語にはない音や、紛らわしい音がたくさんあります。スピーキングでは、相手が理解できる程度に正しい発音をする必要があります。
また、リスニングにおいては、自分できちんと発音できない単語を聞き取ることはできません。正しい発音が理解できれば、今まで聞き取れなかったフレーズも自然と耳に入ってくるようになります。
発音の知識は、一見関係なさそうなリーディングにも役に立ちます。リーディングでは、文字を目で追っているだけのつもりでいても、実際は「頭の中で声をだして」読んでいる場合が多いものです。どう発音していいかわからない単語は、すんなり読むことができません。正しい発音を知っていることは、リーディングの速さや理解力の向上につながっているのです。
英語の発音は、体系的に学ぶことで日本語との違いを意識することができるようになります。また、日本人が陥りやすい発音の間違いを知って意識しておくだけで、リスニングやスピーキングがぐっと改善されます。
■ なぜ私の発音は通じないんでしょうか?
あなたの英語の発音が聞き取ってもらえない原因は色々考えられますが、まず英語学習者に共通する根本的な原因として、母語(日本語)の影響があげられます。小さい頃に英語を使用する国にずっと滞在していたのでない限り、すべての英語学習者はその発音に大きく母語の影響を受けます。
この母語の影響が、なまりやアクセントと呼ばれるものです。アクセント自体は決して悪いものではありませんし、劣等感を感じる必要はありません。アクセントは、あなたの出身と母語を示しているというだけのことです。しかし同時に、相手に理解される程度には正しく発音できなくてはなりません。
たとえば、日本人は と (例: sea と she)の区別が苦手だと言われています。日本語の「サ行」には と が混ざっているため、うまく使い分けるのが難しいのです。また、日本語には子音だけで発音する音がありません。このため、sick のような単語の発音が、となってしまいます。ネイティブにとっては、どちらも混乱の元となります。このほかにも、単語のストレス(アクセント)が間違っている、文全体のイントネーションが自然でない、なども日本人にありがちな問題です。
母語の影響を完全になくすのは不可能ですが、正しい発音と日本人に起こりやすい発音上の問題について知り、意識しておくだけでも、かなり相手に理解してもらえる可能性は高くなります。
■ 発音は誰でも改善できるんですか?
はい、発音は必ず改善できます。ただし、到達できるゴールとスピードは人によってかなり違います。たとえば、子供の頃に英語を話す国に長期滞在していた人は、かなりネイティブに近い発音に到達することができます。また、経験的に女性・音楽の素養がある人(耳がいい人)は、そうでない人よりもネイティブらしい発音を身につけられるようです。さらに、積極的で話好き、好奇心が強い、シャイではない人は発音が早く上達します。(これは英語学習全般にいえることですね。)それにそもそも、生まれつき人より語学の才能がある、という人もいます。
もしあなたが、以上のどのタイプにもあてはまらなくても、心配する必要はありません。たとえネイティブの発音ではなくとも、上達が遅くとも、「理解される発音」をマスターすることは十分可能です。
■ 大人になったら、発音を矯正するのは無理ですか?
いいえ、そんなことはありません。確かにネイティブと同じ発音をできるようになるのは、第二次性徴期までといわれています。しかし、日本人がアメリカ人と変わらぬ英語を話せる必要はまったくありません。肝心なのは「理解される発音ができるかどうか」です。「理解される発音」は、いくつになっても必ず身につけられます。
英語の学習全般にいえることですが、実は発音を学ぶには、大人のほうが有利なことも多いのです。まず、(1) 大人は「体系的に学習する」ことができます。発音記号や発音の組み合わせを順に理解していくのに役立ちます。また、(2) 「物事を整理して、体系的に理解する」ことも得意です。フォニックスのように複雑な法則があるものも、多くの文章に触れていくうちに、自分で法則を蓄積していくことができます。
大人は子供と違って、英語を聞くだけでは発音は上達しません。しかし、体系的に発音の知識を身に着けることで、必ず英語の発音は改善できます。
■ 日本語なまり(アクセント)をなくすことはできますか?
残念ですが、あなたが子供の頃英語を使う国で長くすごしていたのでない限り、日本語なまり(アクセント)を 100% 消すのは不可能です。一般的に、第二次性徴期を過ぎると、発音のアクセントを完全に矯正するのは難しいとされています。
しかし、同時に知っておいていただきたいのは、なまり(アクセント)は決して悪いものではない、ということです。ジャパニーズイングリッシュに、劣等感を抱く必要はまったくありません。英語はいまや世界中で話されている言葉です。地域ごとに特有のアクセントがあります。一般的にネイティブといわれていても、アメリカ人はアメリカなまりの英語を、イギリス人はイギリスなまりの英語、オーストラリア人はオーストラリアなまりの英語を話しているのです。アメリカ国内に限っても、西部のなまり、東部のなまりがあり、またスペイン語なまりや中国語なまりの英語も、立派な英語として通っています。ジャパニーズイングリッシュも、そんな英語のひとつなのです。
それよりも大切なのは、「理解される発音ができる」ということです。ジャパニーズイングリッシュでも、スムーズに相手に聞き取ってもらえるなら、それで十分。バイリンガルとして自分を誇っていいと思います。
■ 英語には標準語がありますか?一番正しい発音を学びたいです。
実は、英語には標準語がありません。メジャーとされる英語だけでも、アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語などがあります。アメリカ国内に限っても、東部と西部では差があり、どこを標準とすることはできません。ただし、ニュースキャスターは、多くの人に話しかけるという性格上、もっとも標準的である英語を話していると思われます。彼らが話すニューヨーク、マサチューセッツなどの北東部のアクセントの英語を、アメリカ英語の標準ととらえてよいでしょう。また、政治家のスピーチなども、同じく標準的な英語の発音であるといえます。(イギリスに関してはわかりませんが、やはりニュースキャスターや政治家の英語が、標準的なイギリス英語であると思います。)
アメリカ英語とイギリス英語の二択には、「あなたのお好みで」としか答えられません。ただし、どちらかの国に滞在する予定のある方は、それにあわせたほうがいいでしょう。一般的に、イギリスではアメリカ英語は「がさつに」、アメリカではイギリス英語は「気取って」聞こえるとのことです。
このサイトでは、アメリカ北東部の英語を基準としています。理由は単に私がアメリカに滞在し、アメリカ英語のほうにより親しみを感じているからです。
■ 発音記号は勉強する必要がありますか?
発音記号は、必ず勉強してください。発音を体系的に学ぶためには必要ですし、なにより自分で辞書を引いて単語の発音を確認できるようになります。問題は、発音記号にさまざまなバリエーションがあることです。もっとも標準的な発音記号は IPA (International Phonetic Alphabet)ですが、専門的すぎる発音まで表現しているので、実際には辞書ではそれぞれわかりやすい(と思われる)工夫がされています。
私が初めて発音記号を習ったのは、中学生のときに通った学習塾でした。その塾では、発音記号に面白い名前をつけて生徒に覚えさせていたのですが、それが後に大学受験の発音の問題にも非常に役に立ったことを覚えています。
このサイトでも IPA とは少し違う発音記号を使っているところがあります。(詳しくは、別記事にてご紹介します。)
■ フォニックスとはなんですか?
フォニックス(phonics)とは、英語のスペルと音の関連を解説する教授法です。フォニックスは、リーディング力の向上に欠かせないとされ、アメリカでは幼稚園から教わり始めます。リーディングをしているとき、たいていの人は「頭の中で声を出して」読んでいます。
フォニックスによって、つづり字と発音を関係付けられれば、スムーズに読むことができます。また、フォニックスはボキャブラリーを増やすのにも役立ちます。たとえば、リスニングで聞いた言葉を(多少スペルが間違っていても)メモに残せれば、あとで辞書で調べて新しい単語やフレーズとして記憶することができます。
ただし、フォニックスには限界があります。英語は発達の過程であまりに多くの他言語の影響を受けたため、スペリングの法則が混沌としたものになってしまいました。フォニックスにのめりこみすぎると、複雑な法則や例外に泣かされます。スペルと音の関連は、まず個々の発音を体系的に理解し、リーディングやライティングを鍛える過程で、自然と身についていくことのほうが多いというのが私の意見です。
■ 発音はどこから、どのように勉強を始めればいいんですか?
大人になってからの英語学習は、体系的に学ぶことが必要です。大人は子供に比べて雑然とした情報を吸収する力が鈍っています。「聞くだけで上達する」というような教材もありますが、私はこれはかえって遠回りだと思います。発音の法則は、混沌とした情報を理解しやすいようにわざわざ整理したものです。大人はもともと「体系的に勉強する」ほうが得意ですから、素直に発音の法則をひとつひとつ確認していきましょう。
発音の法則と呼ばれるものには、さまざまな段階があります。まず、最小単位の子音、母音のような個々の発音。そして、子音郡(cluster)と呼ばれる子音の組み合わせ、シラブル、音の組み合わせによる音のバリエーション、単語のストレス(※)、フレーズ・文章のイントネーション、フォニックスなどもあります。
最初は、個々の子音や母音を順に確認していくのがよいでしょう。それから、子音郡(cluster)やシラブルについて理解し、ストレスを正しく置く方法を学んでください。音の組み合わせによるバリエーションやフォニックスは、つまみ食い的に知っていけばよいと思います。最後に、フレーズ・文章のイントネーションを理解すると、スピーキングがとても自然に聞こえるようになります。
(※)ストレスとは、単語の中で強調されるシラブルのことです。アクセントともいわれますが、「なまり」を意味するアクセントと紛らわしいので、このサイトではストレスに統一しています。
■ 正しい発音を習うにはネイティブの先生の指導が必要ではないんですか?
ネイティブの先生がいれば安心でしょうが、必ずしも必要ではないと思います。今はリスニングのための教材が簡単に手に入ります。また、ネイティブの先生の出身によっては、意図しないアクセントを教わることにもなってしまいます。
なによりも、多くのネイティブの先生は「自分がどうやって発音しているか」、「日本人がどの発音でつまづくのか」を案外わかっていないことが多いのです。日本語のネイティブである私たちが、「ん」の音をどのような法則で使い分けているのか知らないのと同じことです。
きちんと英語の発音の知識を体系的に身に着けているのであれば、ネイティブ・非ネイティブどちらの先生でもかまいません。
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