【文法】仮定法(3) 《仮定法過去完了》 |
仮定法の三回目です。先日、現在・未来の仮定法(仮定法過去)(※)について解説しました。現在・未来の仮定法(仮定法過去)は、実現可能性の低い「想像」や「夢」を表現する特別な条件文でしたね。今回は、もうひとつの仮定法、過去の仮定法(仮定法過去完了)をご紹介します。
(※)参照記事
- 仮定法過去の基礎: 仮定法(1) 《仮定法過去》
- 仮定法過去と be 動詞: 仮定法(2) 《仮定法過去:be 動詞》
■ 歴史にイフはないけれど
過去の仮定法(仮定法過去完了)は、どのようなときに使うのでしょうか?現在・未来の仮定法(仮定法過去)とはどう違うのでしょうか?以下の例文を見てください。
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(a) は、現在・未来の仮定法(仮定法過去)、(b) は過去の仮定法(仮定法過去完了)をつかった条件文です。
まず (a) の文を見てください。(a) は「明日」という未来について話しています。現在・未来の仮定法(仮定法過去)は、実現可能性の低そうな「想像」「夢」について語るものでしたね。この文章では「明日の天気予報によれば万にひとつも雪は降りそうにないけれど、もしも降ったとしたら」という、明日についてのありえない想像を表現しています。
一方、(b) の文章はどうでしょう。この文章には過去の仮定法(仮定法過去完了)が使われています。過去の仮定法(仮定法過去完了)は、過去のイフを表現する条件文です。いいかえると、過去の仮定法の if は、実際には起こらなかったことについて述べています。昨日は、実際は雪は降らなかったのです。起こってしまった出来事は後から変えることはできません。でも、あえて「(もう変えられない過去だけど)もし雪が降っていたとしたら」のように過去のイフを想像する場合に、過去の仮定法(仮定法過去完了)は使われます。
二つの仮定法の違いは、「イフの起こる時間」にあります。現在・未来の仮定法(仮定法過去)が、「実現可能性は限りなく低い、現在・未来の出来事」について想像や夢を述べているのに対し、過去の仮定法(仮定法過去完了)では、「実現可能性はゼロの、過去のイフ」を描写します。
もうひとつ、別の例文を見てみましょう。
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(a) の現在・未来の仮定法(仮定法過去)の文章は、「もう生きてはいない王様が、もし今生きているとしたらどうするか」という、現在・未来の出来事についての想像です。これに対し、(b) の過去の仮定法(仮定法過去完了)の文章は、「ある王様の死後に起こった戦いについて、その過去の時点でまだ王様が生きていたら、戦いにどんな変化があっただろうか」のように、過去の起こらなかった出来事が想像の対象です。
「歴史にイフはない(There's no if about history.)」という言葉は有名ですね。過去はけっして取り戻せない。しかし、だからこそ「あの時もしこうだったら」という想像は楽しいし、それでも「あの時こうしていたら」という後悔はやめられないのです。
- もし彼と結婚していたら
- もしレポートをちゃんと計画的にやっていたら
- もし救急車を呼んでいなかったら
- もしバブルがはじけていなかったら
- もしケネディが暗殺されなかったら
これらの変えられない過去の「イフ(もし)」を表現するのが、過去の仮定法(仮定法過去完了)なのです。
■ 過去の仮定法(仮定法過去完了)
それでは、過去の仮定法(仮定法過去完了)の構文を解説します。先にあげた例文をもう一度見てみましょう。
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例文の下線部に注目してください。過去の仮定法(仮定法過去完了)では、if 節の動詞には、過去完了(have + 動詞の完了形)を使います。また、条件の結果を示す主節では助動詞の would に現在完了(have + 動詞の完了形)をとります。
if 節 | 主節 |
||
過去の仮定法 (仮定法過去完了) |
if | 過去完了 |
would + 現在完了 |
上のセクションであげた「イフ(もし)」を過去の仮定法(仮定法過去完了)で表現してみましょう。
if 節 | 主節 | |
if | I had married him (もし彼と結婚していたら) |
my life would have been disastrous. (私の人生は悲惨なものになっていたでしょう。) |
if | you had worked on your paper according to the plan (もし君がレポートをちゃんと計画的にやっていたら) |
you would have finished it yesterday. (昨日には仕上げられたはずだよ。) |
if | he had not called an ambulance (もし彼が救急車を呼んでいなかったら) |
I would have died. (私は死んでいたでしょう。) |
if | the babble hadn't burst (もしバブルがはじけていなかったら) |
would we still have lived that extravagant life? (あんな金遣いの荒い生活を続けていたのだろうか。) |
if | the president Kennedy hadn't been assassinated (もしケネディが暗殺されなかったら) |
he would have influenced over today's US policy. (今日のアメリカの政策に影響を及ぼしていたでしょう。) |
過去の仮定法(仮定法過去)は、普段あまり使わない過去完了や助動詞と一緒に使う現在完了を用いるため、構文が少し複雑です。構文を眺めているだけでは使いこなせませんから、一度過去の「イフ」の文章を 10 個くらい作ってみてください。そうすれば、徐々にパターンが身についてくると思います。
普通の if を使った条件文、現在・未来の仮定法(仮定法過去)と仮定法完了の比較を以下の表にまとめました。
対象の時間 | if 節の時制 | 主節の時制 | if の実現可能性 | |
普通の if 条件文 | 現在・未来 | 現在 | 現在・未来(will) | ある |
現在・未来の仮定法(仮定法過去) | 現在・未来 | 過去 | 過去(would) | ほとんどない |
過去の仮定法(仮定法過去完了) | 過去 | 過去完了 | 現在完了(would have) | ない |
実際の「時間」と if 節の動詞の「時制」が仮定法では一致しない、という点に注意してください。たとえば、現在・未来の仮定法(仮定法過去)では、実際には現在や未来の「イフ」の話をしているのに、if 節では動詞は過去形になっています。仮定法で使われている時制は、「これは仮定法ですよ」ということを示すための記号だと思ってください。
「イフ」はいろいろな映画や小説のテーマにもなっていますね。お気に入りの映画や小説の「イフ」を、仮定法過去完了を使って英文で表現してみてはいかがでしょうか。(ちなみに、イフものでは私は村上龍の "5分後の世界" がいちおしです。)
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