【チャンク】名詞チャンク:後置修飾の利点と種類


今回は、名詞チャンクの後置修飾について解説します。後置修飾とは、その名の通り「名詞の後ろに置かれる修飾句」のことです。前からしか修飾できない日本語と違って、英語は名詞の後から説明をつけたすことができるのです。


・「チャンクって何?」と思った方はまずこちらをお読みください。: スピーキング力の決め手は「小さな英語」
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■ 便利な後置修飾



後置修飾は日本語の文法には存在しませんが、英語では頻繁に登場する重要な名詞チャンクの構成要素です。一見複雑な構成の英文も、文の要素を解剖してみれば長い後置修飾が名詞にくっついているだけだったりします。日本語にはない修飾方法なので、はじめは使い勝手が悪いかもしれませんが、いったん慣れてしまえば「これが日本語にもあったら便利なのに」と思えるほどになります。なぜなら後置修飾には、「文章の大枠の構造が崩れにくい」という利点があるからです。

1. 聞き手・読み手:「大切な文要素が見つけやすい」

「赤い傘を持ち黄色い帽子をかぶって遊んでいる小さな男の子という日本語のフレーズを使うことを考えてみましょう。「男の子」という名詞にかかる修飾詞はすべてこの名詞の前に置かれ、結果として核である名詞が登場するのはフレーズの最後となっています。このようなフレーズを文章内で使うと、文の構成要素である核名詞が見わけにくくなる場合があります。

たとえば「私の子供は、あの男の子です。」というシンプルな構造の文でも、長い修飾詞のついた名詞句を補語「男の子」の部分に当てはめると「私の子供は、あの赤い傘を持ち黄色い帽子をかぶって遊んでいる小さな男の子です。」のように、主語と補語である「男の子」がかなり離れてしまい、結果として聞き手や読み手にとって、文の構造がわかりにくくなってしまいます。

同じ意味のフレーズを、今度は英語で表現してみます。核となる名詞は "a boy" です。「小さい」という意味の形容詞 little は、前置修飾とするほうが自然ですが、それ以外はすべて後置修飾として、核名詞の後に続くので、"a little boy who is playing in a yellow hat with a red umbrella in his hand" のようなフレーズとなります。このフレーズでは、核となる名詞が比較的前のほうで登場します。 文章にはめ込んでも、"My son is that little boy who is playing in a yellow hat with a red umbrella in his hand." のように、主語と補語の距離がそれほど空かないので、文構造が比較的わかりやすく保たれています。

2. 話し手・書き手:「微細な情報は後から追加すればよい」

名詞の前で詳しく説明しようとするあまり、結局何を修飾しようとしているのかわからなくなってしまうことがありませんか?細かい説明は後置修飾を使って追加していけばいい、という考えでいれば、大切な情報を思いついたときにとりあえず言って(書いて)しまえるので、これから作ろうとしている文の構造を見失いにくくなります。また、「大切な核の情報(名詞)」+「詳細情報」+…とパターンは、小さな英語をつなげていくチャンキングそのものですので、この後置修飾をうまくつないでいけることがスピーキング能力の向上につながります。

たとえば、上記の "that little boy who is playing in a yellow hat with a red umbrella in his hand" という名詞チャンクでは、 "that little boy" (あの小さな男の子)というコア的情報がまず小さな思考の塊として発話されます。そしてこのコア情報のあとから、順に "who is playing" (遊んでいる)、"in a yellow hat" (黄色い帽子をかぶって)、"with a red umbrella in his hand" (手に赤い傘を持って)といった、小さな後置修飾の塊をつないでいきます。(右上の絵のように、機関車の連結を想像してください。)これらの修飾句の順序はある程度柔軟なので、思考の順番のままに追加していくような形になります。

このように、後置修飾句を後へ後へつなげていくことで、全体で見れば複雑な名詞チャンクをスムーズに構成することができふのです。


次に、名詞チャンクの後置修飾の種類を見てみましょう。



■ 名詞チャンクの後置修飾



名詞チャンクの後置修飾には、以下の八種類があります。

(1) 形容詞 + α 形容詞と前置詞(句)・副詞(句)の組み合わせ。名詞の属性や状態を示す。 the man familiar to us all
(2) 現在分詞 + α 現在分詞と前置詞(句)・副詞(句)の組み合わせ。核名詞の能動的動作を示す。 the man sleeping on the bench
(3) 過去分詞 + α 過去分詞と前置詞(句)・副詞(句)の組み合わせ。核名詞の受動的動作を示す。 the man dumped by his girlfriend
(4) 前置詞 + α 前置詞と名詞の組み合わせ。核名詞の空間的・非物理的関係などを示す。 the man in a black shirt
(5) 不定詞 to と動詞の原型の組み合わせ。核名詞の動作・状態を示す。 the man to lead our project
(6) 関係代名詞 which・whoなどの関係代名詞と文章の組み合わせ。核名詞の詳細な説明を追加できる。 the man who invented the printing press
(7) 副詞 場所や時間を示す情報を付け加える。慣用化した表現が多い。 the man over there
(8) 同格 名詞の後ろに、それと対応する内容の名詞を付け加えることができる。 Natalie Portman, one of the most beautiful and talented actress

(1) 形容詞・(2) 現在分詞・(3) 過去分詞 は、前置修飾にも登場した要素ですが、α(前置詞/副詞 + 名詞)がついた場合は、核名詞の後ろにつく後置修飾となります。

(4) 前置詞は日本人にとってはやや感覚がつかみにくい要素ですが、構造自体は「前置詞+名詞」とシンプルです。使いこなすには前置詞のイメージをつかめるかどうかがカギとなります。(前置詞のイメージについては、Ricko 発行のメルマガも参照してください。)

(5) 不定詞・(6) 関係代名詞は、形容詞や前置詞よりは複雑な構造になりますが、これらも文章に深みを持たせる重要な役割を持っています。特に不定詞は、前置修飾の形容詞とよく組み合わせて面白い使われ方をします。

(7)副詞は、名詞である人・物の位置関係や時間を示す慣用的な表現がほとんどです。

最後に、(8) 同格は、日本語と同様に核名詞の直後に、核名詞とイコールとなる意味の名詞を並べるものです。


次回から、後置修飾の要素をそれぞれ解説していきます。まずは、(1) から (3) の形容詞・分詞の後置修飾についてご紹介します。




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このページは、Rickoが2008年5月25日 00:30に書いたブログ記事です。

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