【発音(応用)】ストレスの法則(5)《あいまい母音》 |
ストレス(※)に関する説明では、ストレスのかかるシラブルばかりが注目されがちですが、実はストレスのかからないシラブルも同じくらい大切です。ストレスは、シラブル間の強弱・緩急で表現されています。ストレスのかからないシラブルを上手にこなすことができれば、単語全体のストレスのリズムが飛躍的によくなります。
今回は、このようなストレスのかからないシラブルの鍵となる、あいまい母音(schwa)という母音についてご紹介します。
(※)ストレスは、アクセントとも呼ばれていますが、訛りの意味のアクセントと区別するためにこのサイトではストレスに統一しています。
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・ストレスの法則(4)《2シラブルの単語》
■ ストレスのないシラブルの母音: machine はどうして「ミシン」になったか
ストレスのかからないシラブルの母音をどう発音しているか、意識したことはありますか?今までの記事(※ 関連記事を参照)でも、ストレスのかかるシラブルにばかり注目してきました。ところが実際は、ストレスのかからないシラブルの母音も、ストレスの表現には同じくらい重要な役割を果たしています。
まずは、以下の2シラブルの単語の一覧を見てください。ストレスのかかるシラブルを太字で、ストレスのかからないシラブルの母音を青字でマークしました。
ストレスがかからない シラブルの母音のスペル |
a | e | i | o | u |
パターン(1) 第1シラブルにストレスがかかる |
palace grammar courage |
college sadness market |
promise cousin notice |
purpose common doctor |
circus lotus lettuce |
パターン(2) 第2シラブルにストレスがかかる |
afford about machine |
escort result prepare |
disturb ignore bizarre |
oppose control today |
suppose submerge suffice |
青字で示されている、ストレスのかからないシラブルの母音に注目してください。驚くべきことに、これらの母音は、スペルは違えど発音時にはほとんどすべて同じ音として発音されます。courage の a も、sadness の e も、promise の i も、同じ音なのです。
これは、ストレスのかからないシラブルの短母音は、弱くぼんやりとした母音、いわゆるあいまい母音(schwa)になるという法則のためです。くっきり強調して発音されるストレスのかかる母音と、それ以外の弱いぼんやりとした母音の組み合わせが、英語の躍動感のあるリズムを作り出しています。
ストレスとあいまい母音の関係は、最初は少し理解しづらいかもしれませんね。私たちの身近にあいまい母音に関係する、おもしろい例があります。それは、ミシンです。ミシンという言葉の元は、sewing machine の machine が訛ったものであるといわれています。一方で、現在 machine に対応する外来語は、「マシン」や「マシーン」です。machine のスペルからするとこちらのほうが正しいように思えますよね。
ところが、よくよく machine の発音を聞いてみると、実は「ミシン」のほうが元の英語の発音に近いのです。machine は、第2シラブルにストレスがかかる単語です。ストレスのかからない第1シラブルの a は、あいまい母音となります。あいまい母音は、口の中で「あ」とも「う」ともつかないぼんやりとした音として発音されるため、この a が日本語の母音の中でも口をあまり開かず、唇の動きが少ない「イ」の音ととられたのではないかと思います。昔の人のほうが、素直に音をとらえられたのかもしれません。
ひとつ実験をしてみましょう。日本語の「ミシン」は、「ミ」がもっとも高く発音されますね。ためしに machine のストレスにあわせて、「シ」を一番高く、さらに長めに伸ばしてみてください。…machine のネイティブっぽい発音に近づいたと思いませんか?日本語で「マシン」と発音したときと、よく比べてみてください。
なお、このあいまい母音化のルールは、 などの二重母音には当てはまりません。二重母音は、ストレスのないシラブルであっても、若干短く、小さく発音されはしますが、母音そのものが置き換わるわけではありません。(例: decade )
■ あいまい母音の発音
英語には、短母音、二重母音あわせて 19 個の母音があります。あいまい母音もそのうちの一つですが、ストレスのかからないシラブルでしか使われない、という少し特殊な母音です。
あいまい母音は、「あ」とも「う」ともつかない、ふっともらしたため息に音がついたようなイメージです。口は半開きにして、舌と唇から力を抜き、小さく「う」といってみましょう。これがあいまい母音です。
前回の記事の2シラブルの単語のリストを、もう一度掲載します。今度は、ストレスのかかる母音だけではなく、ストレスのかからない母音にも注目して発音の練習をしてみてください。(ストレスのかかるシラブルは太字に、ストレスのかからないシラブルの母音=あいまい母音は青字になっています。)
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次回は、3シラブルの単語のストレスについて解説します。
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