【発音(応用)】ストレスの法則(11)《続・接尾辞とストレス》 |
前回の記事では、品詞を決定する接尾辞とストレスの位置の関係について説明しました。今回は、接尾辞とストレスの関係を違う角度から解説して、『ストレスの法則』シリーズを締めくくりたいと思います。
(※)ストレスは、アクセントとも呼ばれていますが、訛りの意味のアクセントと区別するためにこのサイトではストレスに統一しています。
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■ 接尾辞とストレスの移動
多くの単語は、コア(基幹)となる部分と、意味や品詞を決定する接頭辞や接尾辞などからなりたっています。前回解説したとおり、接尾辞の中には、単語のストレスのパターンを決定するものがいくつかあります。ここでは、同じコア(基幹)にさまざまな接尾辞がつくこどで、どのようにストレスの位置が移動するかを確認してみたいと思います。
接尾辞とストレスの位置の関係が明確な単語のセットの多くが、ラテン語やギリシャ語に語源をもつ単語です。特に、人文科学、自然科学、医学に関する言葉によくみられます。(ちなみに、これらは TOEFL に頻出の分野です。)
(※ 以下、太字はストレスのあるシラブル、下線はその母音です。)
-ize ⇔ -zation
-ize は、名詞や形容詞について「...になる、...にする」という意味の動詞を作ります。-zation は、-ize で終わる動詞を名詞化して、「...になる/すること」という意味になります。-ize のストレスパターンは一定ではありませんが(以下の例はたまたま一緒ですが)、-zation のストレスはいつも -za- のシラブルにかかります。
-ize | -zation |
synchronize (同時に起こる) |
synchronization (同時発生) |
legalize (合法化する) |
legalization (合法化) |
modernize (...を近代化する) |
modernization (近代化) |
civilize (...を文明化する) |
civilization (文明、文明化) |
-logy ⇔ -logical ⇔ -logist
-logy は、「...学、...論」などを表す名詞を作ります。ギリシャ語の logos (科学)から生まれた接尾語です。-logy で終わる単語は、その直前のシラブルに母音がかかります。「...学の、...学に関する」を表す -logical は、-lo- のシラブルにストレスがかかります。(前回の記事の『-cal』の解説を参照)また、-logist は、「...学の研究者、専門家」を意味する接尾辞です。-logist を含む単語は、直前のシラブルにストレスがかかります。
-logy | -logical | -logist |
geology (地質学) |
geological (地質学上の) |
geologist (地質学者) |
psychology (心理学) |
psychological (心理学上の) |
psychologist (心理学者) |
seismology (地震学) |
seismological (地震学上の) |
seismologist (地震学者) |
anthropology (文化人類学) |
anthropological (文化人類学上の) |
anthropologist (文化人類学者) |
-graphy ⇔ -graphical ⇔ -grapher
-graphy は、「文字」に関することを表す名詞を作ります。この接尾辞で終わる単語では、-graphy の直前のシラブルにストレスがかかります。-graphical は、-graphy を含む単語から形容詞を作ります。-graphical の単語のストレスは、-gra- にかかります。-grapher は、「そのことを仕事として行う人」を表す接頭辞で、ストレスは -grapher の直前のシラブルにかかります。(前回の記事の『-cal』の解説を参照)
-graphy | -graphical | -grapher |
photography (写真撮影) |
photographical (写真のような) |
photographer (写真家) |
geography (地理学) |
geographical (地理学上の) |
geographer (地理学者) |
choreography (舞踊振り付け) |
choreographic(al) (舞踊振り付けの) |
choreographer (振り付け師) |
seismography (地震学) |
seismographical (地震学上の) |
seismographer (地震学者) |
-ate ⇔ -tion
-ate は、動詞の語尾ですが、通常2シラブルの単語では -a- に、3シラブル以上の音節では、-a- の直前のシラブルにストレスがかかります。-tion は、「...すること」を表す名詞の接尾辞で、直前のシラブルにストレスがかかります。(前回の『-tion』の解説を参照)
-ate | -tion |
educate |
education (教育) |
animate (...を勇気付ける) |
animation (活発、生気) |
separate (...を引き離す) |
separation (分離、離別) |
accelerate (...を加速する) |
acceleration (加速、促進) |
これらのストレスのパターンを完全に暗記する必要はありません。「同じ接尾辞で同じようにストレスが移動することもあるんだな」とわかっていただければそれでいいです。ここに挙げた例を上から下、左から右、と繰り返して読んでみてください。また、上記の例のように絶対のパターンではなくとも、同じようにストレスが移行する接尾辞の単語はたくさんあります。たくさんの単語のストレスを注意して見ていれば、いずれ自然とストレスのパターンに対する感覚が磨かれていくはずです。
さて、今回でストレスについての解説は終了です。これまでにあげたストレスについての説明は、すぐに実際の会話で使いこなせるものではないと思います。日々「この単語のストレスはどこにかかっているのか?」「ストレスのかかるシラブルの母音は長く・高く」「ストレスのないシラブルの母音はあいまい母音で発音しよう」と心がけて、音読の練習をするなどの、地道な努力が必要です。
CD などがついた英語の教材(できれば、短文がたくさんあるもの)があれば、その文に含まれる単語のストレスをまず辞書で確認した上で、ストレスを意識しながらCD の後について真似てみるのも、ストレスの勘をつかむための練習になります。
シリーズの初めにも申し上げたとおり、オーラルコミュニケーションでは、ストレスは個々の発音の正確さよりも重要な要素といっても過言ではありません。単語を辞書で引いたら、ストレスも一緒に調べて何度も口に出して練習みるということを、これからの習慣にしてください。必ず、スピーキング・リスニング力の向上につながります。
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